子ども未来通信第36号 アートセラピストのアハハコラム

子どもたちひとり一人が、自分を認めて、お互いを認め合う世の中を創り出すこと
子ども未来通信は、子ども未来の活動内容やアートセラピストの視点から語る子どもたちの様子や心の成長などをコラムを通して皆様にお届けしていきます。

アートセラピストのアハハコラム

今年の一文字を書いてみよう

新年あけましておめでとうございます。
本年も子ども未来研究所をよろしくお願い致します。

皆さんは新年の目標をたてましたか?目標も大切ですが、今年はこんな事をしてみませんか?

こんな自分だったら嬉しいな。ワクワクするな。」そんな自分の一文字を決める。

これは、去年私と思春期息子(中2)が試した、今年の一文字のアートワークセラピーです。
後々、その一文字がわたしたち親子を助けてくれた。そんな話です。

 

息子と取り組んだ新年アートワークセラピー

「自分が嬉しい、ワクワクする、今年の一文字を描こう」と書道の宿題をやっている息子に声をかけました。もちろん私も書きました。
息子は「歩」と書きました。理由を聞くと「躍」本当はこの字が最初に浮かんだんだけど、なんかしっくりこなかった。歩くと景色が見えるでしょ。今年は景色を見ながら進んでみたい。そんなことを話しました。

私の息子は中2のスポーツ選手で、東京の強化選手にも選んで頂き、頑張る日々でした。
しかし、成長期の身体の変化や怪我に苦しんでいる時期でもあったので、その言葉を聞いて、見守ってあげなくてはいけないなと心に誓っていました。

 

葛藤の日々

春が来て1学期が過ぎた頃。身体の状況は悪化、学校に行けない日もあり、体調を崩し、練習会も行かず、ますます体力も無くなり、パフォーマンスは下がる一方。
体調が良くなってきて、練習すると途端に身体に支障が出て、中途半端に登に行っては身体を痛める、どうやって以前のように戻して良いのかも見当がつかない。
やる気を失い別人のようでした。私も本当に辛くて、けんか、励まし、話し合い、もうあらゆる事を体当たりでして、とにかく大変でした。

今思えば、私は焦っていました。これ以上病気をして欲しくない。子どもが笑って競技していた頃に早く戻って欲しい、強化選手にも選ばれたのに感謝もせずに。
親の願いが子どもへのプレッシャーになっているともわからずにいました。

 

一回目の決断

「一回競技を離れ、休みたい」と言ったのは、2学期が始まった頃でした。「今までも休んでたけどね」と心では思いましたが、「休む」という言葉を口にしたのは初めてだったので、その決断を見守ることにしました。息子は1ヶ月半後の強化選手の練習会にはでると決めていました。
毎日家にいてゲーム、学校、ゲーム、勉強、ゲームという日々でした。時々筋トレをしているようでしたが、見てもわかるくらい筋力はおちて小さな体つきになっていました。

強化選手の練習会が、明日という日のことでした。そこから復帰すると本人は決めていたけれど、こちらから見ても、強化選手に合流できるような身体では到底ないし、いきなりそのような練習に戻っては、危険だと言うことは、目に見えてわかることでした。
ずっと黙っていた夫がさすがに見かねて「今の状態で行ったら本当に危ないので(その競技はクライミングで数メートルの高さまで登るためその強化練習ともあれば本当にそうでした。)ちゃんと考えなさい。」というと、息子はうなだれ、貝のようになりました。

 

2回目の決断

ここまで来たら私も何度も同じ道は通りたくないその一心で。

「どんな自分でいれたら嬉しいか?それなんじゃない?」

私は責めたい気持ちをぐっとこらえていました。本当は、山ほど責めたい気持ちはあったけど、あふれ出そうな気持ちをぐっとこらえていました。
長い長―い沈黙の後「歩きたい」とつぶやいて。「オレ、また焦ってやるところだった。練習に行きたかったし登りたかったけど、みんなに会うと、悔しくて、また焦ってやっちゃう。だからみんなとまた登るために一ヶ月、他のところで登ってパフォーマンスを上げて合流したい」
その言葉を聞いたとき、私は「はっ」としました。走らせようとしていたのは私かも知れない。お正月の書き初めをすっかり忘れていましたが、周りを見て過ごしたいといった言葉を思い出すことが出来ました。「そうだったね。歩くっていっていたもんね。その決断すごく伝わってきたよ。おかあさん頑張ることがいい事だと思っていたかも知れないごめんね。」となんだか涙が出て、そう伝えていました。

そこからの、彼は本当に別人で、家で出来ることをしたり、もちろんゲームもゴロゴロもしていましたが、自分の身体と向き合って、ゆっくりといろいろ確認しながら前に進んでいる様子がうかがえました。
そして一ヶ月後、笑顔で強化練習に合流し仲間から迎え入れられる息子を見せてもらうと言うことに感謝をしている自分が居ました。

 

歩むという文字から見えてきたこと

アートセラピーでする表現は本当に不思議だなと思う体験でした。
占いとは全く違うけれど、未来の自分へのギフトのようだと感じる体験でした。

そこに起こる苦悩や悩みは本当は自分が作り出しているのかも知れ無いなと思いました。

息子の側から見れば、一回目の決断は「歩」ではなく「止まる」か「走る」だったのかも知れません。

新年の自分は、本当の自分の願いを知っていました。「歩きたかった」自分です。
そして、それに気がつかないと、あらゆる事で気がついて!気がついて!と出来事が起こっていたのかもしれません。これはセラピスト目線の分析なので、本当かは知りませんが。

ちなみに私が描いた文字は「輝」でした。息子を輝かせるのではなく自分が輝きたかった。本当は自分が頑張りたい私がいた。そんな風に理解しています。

今年の一文字。是非描いてみてはいかがでしょうか?
自分がわくわくして、こんな自分でいられたら心が喜ぶ」一文字です。

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