【セラピストインタビュー】ぐるぐるキングダム・奥田彩さん

“ぐるぐる”のエネルギーで、心に自分だけの“キングダム”を

 

子どもたちは人生の師匠。会社員から保育士、そしてセラピストへ

私のファーストキャリアは、エンジニアリングコンサルタントでした。
それまでの私は、「人は、とにかく頑張って、良い成績を上げて、お金を稼ぐことが偉い」と思っていました。

しかし入社から数年経った頃、心身を壊して退職することに。
これまで順風満帆に生きてきたと思っていましたが、頑張れなくなってしまったことで、自分の人生が一気に崩れ落ちていくようでした。

治療を続けても体調は思うように回復せず。そんな状態でも「何かしなければ」と、始めたのが、近所の保育園でのアルバイトです。

私は1歳児クラスを担当することになりましたが、そこで出会った子どもたちは本当に自由で。
洗濯ネットを頭からかぶって楽しそうに笑っていたり、掃除機のホースを持って元気に走り回っていたり。まだ何にも捉われていないハチャメチャな姿に、「人は本来、こんなに自由で面白いものなんだ……!」と、ハッとさせられました。
子どもから感じる人間の原始的なエネルギーは、私に大きなインパクトを与えてくれたのです。

子どもたちと触れ合ううちに、私の心身はみるみる元気に。加えて、アートセラピーを学んで自分自身と深く向き合ったことで、人生観もガラリと変化。人から評価されなくても、社会的に意味がないことでも、自分がやりたいことをして、自分が好きな自分でいられればそれでいいのだ、と思えるようになりました。

まさに、子どもたちは私にとっての師匠です。

 

想像を超える面白さが、私たちの心のなかにある

横浜市青葉区あざみ野で私が開催しているアートワークセラピー教室「ぐるぐるキングダム」は、自分が自分の人生の“キング”になって、心のなかに自分だけの“キングダム”を創り上げる場です。
「ぐるぐる」とは、子どもたちがやりたいことに集中しているときの「今、私はこれがやりたくて仕方ないんだぜ!」というワクワクでいっぱいのエネルギーを、私なりの言葉で表しています。

誰もが成長するにつれて、「こうしなければいけない」「こんな自分でいなければならない」が心の中で大きくなっていきます。
でも、本当の自分はずっと心の中にあり、そこにはきっと、想像を超える面白さがあるはずです。

好きなことをいっぱい楽しんで、それを認められ、「自分のままでいていいんだ」という感覚を幼い頃から心と体で味わうことで、子どもたちが自分らしく生きる力になればと考えています。

 

“頑張っている自分”からの解放は、とても気持ち良い!

ぐるぐるキングダムでは、毎年夏に、全面ガラス張りのアトリエで色水遊びをしています。親子がごちゃまぜになって、壁いっぱいに絵を描いたり、水鉄砲に絵の具を入れてスプラトゥーンごっこをしたり。とにかく、ワクワクして楽しい時間です。

大人も子どもも絵の具まみれになって、赤ちゃんまで色水の水たまりの上をハイハイしている様子を見ると、非日常感のなかで皆が解放されているようで。普段の“頑張っている自分”から離れているときの表情は、とても自由でキラキラしていて、見ているこちらが幸せになります。

これまで、ぐるぐるキングダムには、たくさんの親子が来てくれました。なかには、かつて参加者として通ってくれていた子が、成長してサポーターとして戻ってきてくれたこともあります。幼い頃の記憶は忘れてしまっているかもしれないけれど、ぐるぐるキングダムでの体験が心の奥底に残っているようで、温かい気持ちにさせてくれました。

私は、子どもたちといるときの自分が好きです。
一緒に遊びながら子どもたちの発見や表現に寄り添うことで、「今この瞬間」を純粋に味わい、楽しむことができます。
その想像力で、時間も空間も飛び越えて大冒険をすることだってできます。
そうしているうちに、私の中にも「楽しい」という気持ちが沸き上がり、ワクワクする発想がどんどん浮かんでくるのです。
心の感覚で子どもたちと寄り添うことは、とても気持ち良いですね。

 

子どもも親もほっとできる、もう一つの“家”になりたい

ぐるぐるキングダムをスタートして16年。その間に、私自身も親になりました。

私の息子は大人しくじっとしているのが苦手で、どこに連れて行くのも本当に大変でした。
息子に対して「この子は本当にこのままで大丈夫なのだろうか」と、不安を抱いたり、母親としての自分に自信を失ってしまったりしたこともあります。

息子が2歳になった頃、参加者としてほかのアートワークセラピー教室に親子で参加するようになりました。
そこでも息子は、セラピストの話を聞かずに走り回るなど、自由に振る舞っていました。おそらく幼稚園や学校なら注意されてしまうようなことばかりだったでしょう。

しかし、セラピストは「◯◯君は、自分のやりたいことがあって素敵だね。」「◯◯君といると、とっても楽しいよ♪」と、ありのままの息子を受け入れてくれます。
私はその言葉を聞くたびに、「この子はこのままでいいんだ」と、ほっと肩の荷が下りるのです。
息子だけでなく、親としての自分も認められたようで。アートワークセラピー教室の素晴らしさを、身をもって感じました。

ぐるぐるキングダムも、子どもたちはもちろん、親御さんたちの拠り所でありたいと思っています。
ぐるぐるに来てくれる人たちは、全員一つの大きな家族。
子どもにも、お父さんにも、お母さんにも、「ぐるぐるに来ると、ほっとする」と言ってもらえる、「もう一つの家」のような場所でありたいです。

 

文:ライター舘岡美香

 

教室の詳細を確認

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう